上司が一人になるまで待っていると、いつも先に夕方が来た。コピー機の前で二人になった日は、私のほうが慌てて「お疲れさまです」と言って立ち去った。

カレンダーを見ると、上司には木曜の午後に空きがあった。「ご相談があり、十五分お時間いただけますか」とだけ打った。送ったあと、コピー機の前ならもっと短く済んだかもしれない、と思った。





上司に退職を切り出す前に、一文だけ決めた

その夜、言う順番を紙に書いた。職場への不満を書き出すと、一枚では足りなかった。話すほうの紙には「退職の意向をお伝えしたくて、お時間をいただきました」とだけ書いた。

木曜、上司は椅子を引いて「どうした?」と言った。私は用意した一文を途中で言い直しながら、最後まで言った。上司は一度メモを取る手を止めた。それから、希望する時期を聞いた。

席に戻ると、同僚が「これ、今見られる?」と、いつものように資料を持ってきた。時計を見ると、まだ三時にもなっていなかった。「見られるよ」と答えて、自分のカレンダーから面談の予定を閉じた。