末っ子が自分でみかんをむけるようになった頃、三人がそろう日があった。
上の子が台所に立って、棚から小皿を三枚出した。末っ子は丸ごと一個もらったのに、二房食べたところで、皮のほうが気になったらしい。ちぎった皮を、小皿の縁に一つずつ立てていた。
「ねえ、なんで私がいちばん最後だったの?」
何の話だろうと思った。お風呂に入る順番なら、今日はまだ誰も入っていない。
真ん中の子は、みかんの白い筋を取りながら答えた。
「だって、ひとりで待つのはいやだって言ったじゃん」
生まれる前に、三人で決めた順番
「そうだっけ」
末っ子は皮を一つ倒して、また立てた。
「お姉ちゃんが先で、次がぼく。そしたらこっちで二人で待てるから」
私は流しの水を止めた。
「いつ、そんなこと決めたの?」
上の子は小皿の上のみかんを三つに分けながら、「生まれる前。三人できょうだいになるって決めたとき」と言った。
「じゃあ、私が来るまでふたりとも待ってたの?」
「うん。ふたりなら待てるから」
何か聞き返したかったけれど、何を聞きたいのかがすぐにはわからなかった。あの夕飯のとき、下の子は「欲しいっていうか、早く来ないかなって言ったの」と言い直した。私は同じじゃないの、と答えた。
「十年も待たせて、ごめんね」
私が言うと、末っ子が「お母さんが謝るの?」と笑った。上の子も真ん中の子も笑った。
上の子がいちばん大きな房を末っ子の皿に置いた。末っ子はそれを半分に割ろうとして、汁を指につけた。
「これ、三つにできない」
「そのまま食べな」
真ん中の子がティッシュを一枚取って、末っ子の手の下に敷いた。


