十年たつと、玄関には一足も靴がない日が増えた。上の子も下の子も、私が帰る時間にはそれぞれの用事で出かけている。夕飯がいるかどうかは、家族のLINEで聞くようになった。
そんな頃に、赤ちゃんが生まれた。
赤ちゃん用の靴下を二足買ったとき、片方を手のひらに乗せてしばらく見ていた。あの二人の靴だって、最初はこんなものが入るくらいの大きさだった。
退院して何日かした夕方、久しぶりに玄関に大きな靴が二足そろった。上の子が台所で手を洗い、下の子はその後ろで袖をまくって順番を待っていた。
年の離れたきょうだいが、初めて抱っこした日
最初に抱いたのは上の子だった。
「首、こっちの手で支えて」
私がそう言うと、反対の手をどこに置けばいいかわからなくなったらしい。下の子がクッションを持ってきて、黙って腕の下に差し込んだ。
次に下の子が抱いた。赤ちゃんの口が小さく開いたので、泣くかと思って私は立ち上がった。ただのあくびだった。
「やっと会えたね」
下の子が言った。退院まで会いに来られなかったことを言っているのだと思った。
夕方、親戚から「おめでとう」とメッセージが来た。返事を書きかけて、十年前、私がその人の前で「そんなわけないじゃん」と笑ったことを思い出した。
何から書こうか迷っているうちに、台所で水の音がした。上の子が哺乳瓶を洗っていた。私が立つと、「座ってていいよ。どこに置くかだけ教えて」と言った。


